《剃刀顎の鬼/Razorjaw Oni(SOK)》


ここ2週間くらい下あごの右側が痛くて食事もままならない状態だった。ネットで「あごが痛い なぜ」などと検索してみたところ、どうやら親知らずが原因のケースがあるらしい。ちょうど痛い箇所に生え方が悪い親知らずがあるので、こいつのしわざだろうと思いしぶしぶ歯医者を「親知らず抜いてください」と予約。
下あごの抜歯は顔がかなり腫れるらしい。金曜日に仕事を早抜けして行くことにした。

 

前もって上司にその旨を伝えると、下あごの、しかもまっすぐ生えていない親知らずの抜歯がいかに辛いかを説かれてからかわれる。
歯肉を切り開いて、歯をかち割って、破片を取り除いていくんだけど、その時の音がね......等々。
盛大にびびりつつも、こりゃ翌週は出社できませんわと有給カードをちらつかせて対抗。実際顔が腫れてひどい有様だったら月曜は休もうと思ってた。(まぁ今は食事の時以外マスクが当たり前だから、これもサボりの口実に過ぎない)


そして金曜日。
がんばれ~などといらぬ応援を受けつつ会社を後にし、気の乗らない足どりで歯医者へ。
「ご来所された方は熱測りますね」と受付でおでこに体温計を当てられている間、いっそ熱があって帰される方が週末は穏やかに過ごせるだろうなぁなどと考える。以前上あごの親知らず(綺麗に生えてた)を抜いた時すら口の中がずっと血の味で数日間不快だった。とはいえ、対処を後回しにしてもそれはそれであごの痛みが長引くだけである。
熱は36度4分でなんのドラマも起きず。というか立て続けに測った3人くらいみんな36度4分って言われてたんだけどそういうもんなの?
待合室にて上の空でtwitterを眺めていると、ほどなくして名前を呼ばれて診察室に通された。


例の椅子に座らされたところで看護師の方に症状を説明すると、まずレントゲンを撮ることに。
歯医者でバイトしていた後輩が「レントゲン撮ると料金が高くなる」と言っていたのを思い出すが背に腹は代えられない。
レントゲン写真には他の歯と90度向きが違う歯が1本くっきりと映っていた。どうしてお前だけそんな生え方しているんだ。何度見せられても奇妙である。
あごをさすりながら再び待つこと4~5分。いよいよ今度は医師が僕の椅子にやってきた。


症状を説明すると、医師は「なるほどね~」といった感じで椅子を倒し、僕に口を開けさせる。情けない話だが普通に大口開けるだけで既にだいぶ痛い。

「痛みますか?」

痛い痛い痛いです。ところが、件の親知らずを指でぐいと押されても何故だか痛みは増さないようである。

「ということは、原因は親知らずじゃないみたいですね」

え、そうなの?と拍子抜けしていると首のあたりを指で押され激痛走る。

「やっぱり。(診察室に)入ってきた時から見てたけど、お兄さんちょっと姿勢悪いなと思ったんだよね」

 

おわかりいただけただろうか......。要するに、僕を悩ませているあごの痛みは歯でなく首のコリに因るものらしい。
姿勢が悪い人や長時間PCを使っている人はなりがちとのことで、全日本姿勢悪い選手権優勝かつオンラインゲーム中毒の僕は心当たりしかないのであった。
結局この日の診察は適当にマッサージされたあと痛み止めのロキソニンを3日ぶんだけもらって終了。親知らずはどのみち抜いたほうがいいが、それはあごの痛みが治まってからでいいらしい。
なんだか納得いかないが軽くマッサージされただけでも若干あごの痛みが引いたので、しばらく食べられなかった堅いスナック菓子を買って家に帰りましたとさ。

 
今日の教訓
思い込みの激しい人はインターネットで症状について検索してはいけない。